あとがき ~ヒマつぶし~
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「せ~んぱい」
「うわっ、ど、どうしたの?みずきちゃん?」
この子は橘みずき、キャットハンズで主に中継ぎや抑えをしてる子だ
ちなみにオレはキャッチャーだから自然と話す機会も多くなるわけで、それでいつの間にか恋人という関係になっていた
まぁみずきちゃんと相性がいいから一緒に試合出れるようになってそこからだんだんとスタメンに名を連ねる機会も増えていったんだ
それをみずきちゃんもわかってるからオレはあんまり強く出れないんだよなぁ・・・
強く出ると
「先輩いいんですか?恩人にそんな態度取って?」
という具合になる
まぁでも、かわいいし、そんなところもみずきちゃんの良い所だし、それを含めて好きになっちゃったんだよなぁ
「何ボ~っとしてるんですか?」
「い、いや別に何も・・・。」
「???」
「で、何?」
「ヒマです。」
「そうか、それは仕方ないな。」
「それだけですか?」
「いや、それ以外にどうしろと?」
「なんかいい遊びないですか?」
「テレビでも見てなよ。」
「なんでわざわざテレビ局でテレビ見なきゃいけないんですか?生で見たいですよ」
「仕方ないよ。出番まであまり出歩かないで下さいって言われてるんだから。」
そうなのだ、今オレとみずきちゃんはプジテレビに来ている
なんでもゲストが大のキャットハンズファンだというのでサプライズとして呼ばれたのだ
今年の猫手は日本一に輝き、オレは実力以上のものを出しシリーズMVPに選ばれたし、みずきちゃんもケガをした守護神のかわりに抑えにまわり四連続セーブを記録した。自惚れた言い方をすれば投打の主役ということになる。
はっきりいって出来すぎだ。出来すぎた結果こうやってテレビ局に呼ばれたのはいいが、長い間待たされるハメになった
みずきちゃんが一緒なのが唯一の救いかな、矢部君だったら耐えられない・・・。
「せんぱい!またボ~っとしてますよ!」
「ごめん、ごめん。」
「ボ~っとしてるヒマあったら時間つぶす方法考えてくださいよ」
「寝てればいいんじゃない?」
「いやですよ。せっかく髪セットしたのに崩れちゃうじゃないですか。それに寝たら何されるかわかんないし?」
「な、何もしないよ。こんなところでそんなこと・・・。」
「別にわたしは何も言ってないですよ?せんぱいはスケベですね。」
「う・・・。くそ、はめられた。」
「ふふふ、せんぱいからかうのは楽しいです。」
「・・・・・・。それでヒマつぶしする気?」
「だめですか?」
「だめに決まってるじゃん。」
「えぇ~、じゃあなんか考えてくださいよ?」
「ていうかなんでこっちの部屋に来たの?付き合ってるのバレたらどうすんの?」
「大丈夫ですよ、気づかないですって。」
「いやでも、万が一っていう場合が・・・。」
「わたしが大丈夫って言ってるんだから大丈夫です。」
「・・・。その根拠のない自信はどこから?」
「せんぱいが気にしすぎなんですよ。それよりこのヒマな時間をどうするか考えてくださいよ。」
「いや、オレはべつにヒマでもかまわないし・・・。」
「わたしがイヤなんです。」
「それはそれは大変ですね。」
「いいから考えてください。」
「オレは別にみずきちゃんがいるならそれだけでいいけど?」
「!? ふ、不意打ちは卑怯です。う~・・・、そうだしりとりしましょう。」
「(やっぱり動揺するみずきちゃんもかわいいな)
いいよ。やろうか?勝ったらなにか景品あるの?」
「そうですね、じゃあ勝った方があとで好きなのを考えるってことで。」
「いいよ?どっちから始める?」
「わたしからいきます。じゃあしりとりの「り」からで「りす」」
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「お兄ちゃん、結局その傷のことどんな言い訳するの?」
一緒に登校している奈緒が聞いてきた。
奈緒は僕と同じ私立花山中学に通う一年生だ。
「ねぇ、お兄ちゃんってば。」
「ん、あぁアルがね、適当に転んで顔から突っ込んだとでも言っとけって言うからそうするつもりだよ。」
「まぁ、傷自体はガーゼで隠れてるから何とかなるかもしれないけど・・・。」
「なんとかなるよ。」
「でもお兄ちゃん今日はきっと大変になるよ?」
「え、なんで?」
「そりゃあねぇ・・・、あっ鏡花ちゃんだ。お~い。」
「あ、お、おい、ちょっと・・・行っちゃった。」
どうやら校門付近にクラスメイトを見つけたらしい。クラスメイトの方も笑顔であいさつしている。
すると僕にも気づいたらしくこっちを見てにこやかに会釈をしてくれた。
ああ、礼儀正しくていい子だな、と思いつつ僕は笑顔で小さく手を振りかえす。奈緒は・・・こっちに振り返ることなく行ってしまった。
ま、家族だからいいんだけどさ、でももっとしっかりしてほしいかなぁ・・・。
「うぃ〜す、色男。今日も可愛い女の子侍らせて幸せそうだったなぁ。」
「圭吾・・・、おはよう。だから、あれは妹だって言ってるでしょ。」
「知ってるよ、ただお前の反応が面白くてな。」
今、話しかけてきたこの男は朝倉圭吾、去年からのクラスメイトで部活の仲間でもある。だから自然と仲良くなったんだけど最近のマイブームが僕をからかうことというので困っている。
「・・・はぁ、もういいや。」
「お?どうした?その顔。」
「ああ、これ?昨日ちょっと転んじゃってさ、両手ふさがってて顔からいっちゃって。」
「おいおい、気をつけろよ。」
アルから教えられた言い訳がどうやら通用したみたいだ。アルには感謝しないと。
「お前がいないと、うちの部活は終わりだぞ?」
「そんなことないでしょ。まだ先輩達もいるし、それに何より圭吾がいるんだから。」
「お前がいなきゃうまく回らねぇよ。」
「それは圭吾に合わせる気がないからだよ。」
「そりゃ、合わせる気なんてねえさ。」
「まぁ、プレイはその方がいいんだけど。」
「じゃあいいじゃねぇか。」
「・・・そうだね。」
キーンコーンカーンコーン
「やべ、チャイムだ。急ごうぜ。」
「ん、そうだね。」
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はぁ~、どうしよう・・・。
僕は立里愛美。今とても困っています。
なぜかというとさっきのケンカで顔に殴られたと一目でわかる傷が付いちゃったから・・・。
この傷を学校で見られたらみんなにどんなふうに説明すればいいかわからないよ。
本当のことを言うわけにもいかないし・・・。
僕には人に隠していることがある。
ケンカのことを説明するには少なからずそれに触れなければならなくなる。
そんなことは避けたい・・・。
でも上手いウソなんてつけるかなぁ。
「愛美ちゃ~ん。ご飯よ~、降りてきて~。」
あ、母さんが呼んでる、さっきは顔見せないで部屋まで来ちゃったからなぁ、この傷見たらなんて言うんだろ。
「愛美ちゃ~ん、どうしたの~?寝てるの~?」
う~ん、母さんにも聞いてみようかな。でも聞いても無駄だろうなぁ・・・。
愛美がぼ~っとしている間に階下ではこんな会話が交わされていた。
「奈緒ちゃん、ちょっと愛美ちゃん呼んできてくれる?」
「えぇ~、やだよう。」
「お願い。」
「もぉ~、仕方ないなぁ。」
「どぉ~ん!」
いきなりドアが勢いよく開いた。
「わっ!?・・・、なんだ奈緒か。どうかした?」
「もう、どうかした?じゃないよ。おにいちゃんがなかなか降りてこないから呼びに来たの。」
「あ、そうか。ごめんごめん、今行くよ。」
「あれ?その顔どうしたの?」
「あぁ、それは下で話すからとりあえず行こう。母さんがへそ曲げると大変だし。」
「ん~、そうだね。奈緒もお腹すいてるし。」
一階まで話しながら降りていく。
「そういえば父さんは帰ってきてるの?」
「ん~ん、今日は遅くなるって。」
「そっか、まぁ仕方ないか。」
ダイニングにつくと母さんがちょっと不思議そうに聞いてきた。
「愛美ちゃん、寝てたの?」
「ちょっと考え事。」
「あら?その顔どうしたの?ケンカ?」
「まぁ、とりあえず食べながら話そうよ。奈緒がお腹ペコペコらしいから。」
「あら~、そうだったの?じゃあそうしましょ。」
「もう、そんなこと言わなくてもいいじゃない。お兄ちゃんのバカ。」
「ごめんごめん。」
「はいはい、じゃあいただきます。」
「「いただきます。」」
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何人かの男が一人の女の子を囲んでしつこく絡んでいる。
絡まれている女の子は少し冷たさを感じさせるが人の目を引き付ける容姿を持っていた。
見た目通りの冷たい反応で、男達を無視して通り過ぎようとするが男達は進路を阻む。
「・・・どいて。」
「そんなつれないこと言わないでさ、俺たちと遊ぼうよ。」
「興味ない。」
「きっと楽しいからさ。」
「そうは思えない。」
「ねぇ、あの子が着てるのってうちの制服だよね。ここら辺でうちの制服見るなんて珍しい。」
学校からの帰り道、駅から少し離れた場所で見かけた光景にふと立ち止まる。
「そうだな。」
「あれは絡まれてるんだよね?」
「あんな頭悪そうなやつらと待ち合わせだなんて考えたくねぇな。」
「じゃあ助けようよ。」
「お前がヘタレじゃなくて安心したよ。」
「じゃあ行こう。」
「おう。」
「ねぇ、その子嫌がってるんじゃないかな。」
「あぁ?何だ、お前?」
ナンパのジャマをされたと思ったのか苛立った様子で振り向く。そこには少し背の高い男が立っていた。
「ちょっと通りすがっただけなんだけど、その子同じ学校みたいだから。」
「しらねぇよ、どっか行ってろよ。おれたちゃこれから遊びに行くんだよ。」
「そうなの?」
女の子に答えのわかりきった問いをしてみる。
「違う。そんなつもりない。」
「だってさ。それにあなたらは少なくとも高校生以上、だよね?」
「だからなんだよ。」
「その子、中学生だよ?」
「はぁ?関係ねぇだろ。」
「そうなんだ・・・。」
「うるせぇんだよ、どっか行ってろ。」
「そうは言っても。」
「さっさと消えねぇとぶっ殺すぞ!」
「暴力はいけないと思うんだ。平和的に話し合おうよ。」
「なんだお前?ビビってんのか?だったら消えろよ。」
「いや、ビビってるってことはないけど。」
「ごちゃごちゃうるせぇな、いいから消えろってんだよ!」
バキィ
「がっ!?」
殴られた衝撃で何かが外れ、キラッと日の光を反射した。
「これ以上痛い目見たくなかったら消えろ。」
「・・・いてぇな。いきなりとは性根が腐ったやつはやることも腐ってんだな。」
「はぁ?さっきまでビビってたくせに、なにイキがってんだよ?」
「ビビッてた、か・・・、勘違いもここまで来ると笑えねぇな。」
「何だとコ・・?何だその目?色が・・・」
「口は災いの元、だな。もうただじゃ済まねぇぞ?」
「はぁ!?調子乗ってんじゃねぇ!一人で俺らを相手にできるつもりか?」
「ハッ、一人ねぇ・・・、まぁいい。来い。」
「おい、やっちまうぞ。オラァ!」
一斉に殴りかかる、その数四人。
ただ誰の拳もその体に触れることすらできず、男たちは次つぎと意識を失っていく。
最後の一人も一撃で沈め、一人ごちる。
「あ~あ何だよ、こいつら。準備運動にすらなりゃしねぇ。おい。」
リーダー格と思われる男の襟元をつかみ、ゆすり起こす。
「う・・・、は、はい。」
「この目のことを誰かに言ったらこんなもんじゃすまさねぇからな。」
「は、はいぃ!」
「いいか?誰かがこのことを知っていたら広めたのがお前らだろうがお前らじゃなかろうが、そんなのは関係なくお前らを潰しに行く。学生証はもう見させてもらったからな。逃げようなんて考えるなよ?」
「そ、そんな・・・。」
「そこでのびてるお仲間にも同じことを言っておけ。わかったか?」
「はい・・・。」
「なら、これ以上痛い目見たくなかったら消えろ、だったよな?」
「す、すいませんでしたぁ!お、おい起きろ、行くぞ。」
ふら付きながらもどうにかこうにか逃げていく。
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